
それが青少年期にこそ体験することが望まれる、様々な生活体験・社会体験・自然体験の機会を十分に持つことができず、精神的に豊かな生活を行うことが困難となっている現状を答申は憂いているのである。
「生きる力」をはぐくむために必要なのは、体験活動を豊かにすることであり、そのためには学校・家庭・地域社会が一体となった取り組みが重要である。答申では、学校においては集団活動やボランティア活動、自然体験活動等に参加する中で、円滑な人間関係を形成する資質を高めるように、指導を展開することを教師に求めている。また、家庭や地域社会においては学校と共にPTAや地域の青少年団体、スポーツ団体、児童福祉機関などの幅広い協力による取り組みを求めている。
これらで求められている活動のほとんどは、従前より青年の家が持っていた機能であり、青年の家が活動の場所を提供してきた団体である。青年の家は、そうと意識せずに答申で求めれれている様々な取り組みを、豊富なプログラムや数々の主催事業によって具体化していたのである。青年の家は、過去も現在も、これらを体系化し有機的に結合する中心として機能する場所なのである。そして、教育の在り方が大きく問われている現在と未来においては、「生きる力」をはぐくむための拠点として、より積極的かつ意識的にその存在意義を際立たせなければならない。
それぞれの時代に、青年の家が期待されていた役割はそれぞれに存在したが現代の社会が期待するものと、青年の家の持っている機能が大きく一致を見た今こそ、青年の家から教育改革の大きな波を起こす時であり、時代の先頭に立って不確かな未来へ手探りで進んで行かなければならない青少年に「生きる力」を与えるための重要な基地として、青年の家はしっかりと立っていなければならない。
2. 青年の家は青年のための青年の家になっているか
青年の家が「生きる力」をはぐくむための重要な施設であることは前述のとおりであるが、翻って鑑みるに、青年の家は青年が喜んで来たいと思う施設であろうか。いくら素晴らしい理念と高い理想を掲げても、実際に来てくれなくては「生きる力」をはぐくむことはできない。平成7年に発表された『国立青年の家・少年自然の家の改善について』は言う。柔軟性・先導的事業・体系的取り組み・リーダーシップが不足していると。これら個々の内容については後述するが、我々は青年の家という魅力ある施設をさらに多くの人に利用していただくための取り組みを、今まで以上に推進していくことが求められており、その改革のためには何をなすべきかということについて、これから述べていこうと思う。
■改革への提言
1. これからの青少年教育施設に求められるもの
?@地域の発信基地としての機能
これはのちほど「元気のある青少年施設推進10カ条」の箇所で詳しく述べるが、要するに利用者が来るまで「待ち」という姿勢ではなく、積極的な「攻め」の姿勢で地域社会に関与していって欲しいということである。その場所にあって、利用者のために最善を尽くすというだけではなく、発信基地として積極的に地域社会に参加し、活性化に参画するという新しいスタ
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